どうも、ぜっとんです。
下記の記事で、若手の機械エンジニア、学生さんでも機械設計の仕事がわかるようにまとめました。
今回は少し深堀りします。
機械設計のプロセス(手順)について、できるかぎりわかりやすくまとめていきます。
長文になってしまいますが、できる限り詳しくまとめていきます!
解説動画:機械設計のプロセス(手順)は8つだけ!自分がやりたいプロセスを見つけよう
このブログの内容は、下記の動画でも解説しています。
プロセス①:企画段階・・・相手の要求を理解する
機械設計の仕事プロセス①は『企画段階』です。
- どんなことをするのか?
- どんなことが必要なのか?
詳しく解説していきます。
要求仕様書を作成する
企画の段階では、相手(ユーザー)の要求を理解することから始まります。
相手の要求はあいまいな部分が多く、具体性に欠けていることが多いです。
そのためにも、技術的な根拠に基づいて実現可能なものに置き換える必要があります。
要求だけではなくて、対象となる製品や装置を総合的な視点で眺めることが必要になります。
必要な能力
必要な能力は4つです。
- 1.コミュニケーション能力
- 2.アイデア発想力
- 3.社会全体を広く理解する
- 4.3C分析
一つ一つ解説します。
1.コミュニケーション能力
置き換えるためには、要求顧客とのコミュニケーションが大事です。
表面的な要求だけではなく、裏に隠れている真の要求を十分に理解することが大事です。
2.アイデア発想力
対象となる製品や装置に付加価値をどれだけ生み出せるか、他社が真似できない差別化された製品を設計できるかが重要になってきます。
3.社会全体を広く理解する
専門技術を理解することは重要だと誰でもわかりますね。
専門知識と同じように、視野を広くして経済状況と海外情勢について知ることも大事になります。
視野を広くすることで新しいアイデアが思いついたり、付加価値をつけることができます。
4.3C分析
3Cとは、Customer(顧客)、Competitor(競合相手)、Company(自社)の頭文字をとったものです。
顧客満足を得るためには、相手のニーズ(要求)を明確にして、競合他社にはない自社シーズ(技術・材料・サービス)を把握しておくことが大事だからです。
企画段階のまとめ
企画段階のまとめです。
企画段階のまとめ
- 要求仕様書の作成は、設計者の役割
- 要求仕様書とは、顧客ニーズと自社シーズを結びつけたもの
プロセス②:構想設計・・・機能を明確にして、実現する方法を検討する
機械設計の仕事プロセス②は『構想設計』です。
- どんなことをするのか?
- どんなことが必要なのか?
詳しく解説していきます。
構想図を作成する
できるだけ多くの案をポンチ絵(フリーハンド)を描いていきます。
いくつかのアイデアから最良な案を決めていきます。
最良の案が決まったら2DCADまたは、3DCADを使って、モデリングを作成します。
構想図の図面に寸法をかいていきますが、寸法はざっくりと入れていきます。
検討すべき項目を洗い出す
構想図が出来上がったら、検討すべき項目を洗い出していきます。
- 企画に対して機能が十分か
- どのような機構、構造にしてどのような機械要素を使うか
- 駆動方法、駆動伝達方法、動作や位置を検知する方法をどうするか
- 機械の強度は十分か
- 動作時の不具合や干渉はないか
- コストやスケジュール、スペースは満足できそうか
すべて詳細に決定しておく必要はないですが、実現できそうなアタリをつけておきます。
構想設計のまとめ
構想設計のまとめです。
構想設計のまとめ
- 実現できそうなアタリをつける
- 開発期間を短縮するコンカレント・エンジニアリング(CE)を実現する
CEとは・・・
組織の壁を取り除いて、開発段階からそれぞれの専門知識を出し合い、
企業の総合力で商品化の開発期間開発費抑制をめざしていくもの
プロセス③:仕様書作成・・・技術者が発信する設計思想を文書化したもの
機械設計の仕事プロセス③は『仕様書作成』です。
- どんなことをするのか?
- どんなことが必要なのか?
詳しく解説していきます。
仕様書を作成する
企画部門、あるいは顧客からの要求内容を明確にしていきます。
製品、または装置に関わるすべての仕様を文書化して設計思想を明らかにしていきます。
仕様書の具体的な内容
仕様書の内容で、設計対象物を頭にイメージできるようにします。
- 製品の概要や能力
- 使用条件
- 機器の構成
- 主要部品の品番
- 操作方法
- 制御方法
- 使用時に想定される注意事項etc.
自分が設計した製品を正しく理解してもらうことが重要です。
そして、安全に使用してもらうために設計思想を反映させることも必要です。
また、製品また装置が量産に移行する段階で、仕様書をもとに取扱説明書が作成されます。
専門家でなくても理解できる内容を記載することが大切です。
心がけたいこと
仕様書を作成するときに心がけたいことがあります。
- 正確でわかりやすい表現と言葉を使うこと
- 主語と動詞、5W1Hを意識すること
- 簡潔で、誰が読んでも同じ意味で伝わる文章にすること
具体的な内容部分でも伝えましたが、仕様書の内容が知識・経験が豊富な機械エンジニアだけが見るのではなく、若手の機械エンジニアや専門家ではない人が見ます。
難しい専門用語ばかりではなく、わかりやすい言葉を選んで作成していきましょう。
仕様書作成のまとめ
仕様書作成のまとめです。
仕様書作成のまとめ
- 仕様書は、設計者の考えを説明するためのもの
- 難しくなくて、理解しやすい文章でかくことを心がける
プロセス④:基本設計・・・製品(装置)の基本的な性能や構造を検討する

機械設計の仕事プロセス④は『基本設計』です。
- どんなことをするのか?
- どんなことが必要なのか?
詳しく解説していきます。
検討図を作成する
基本設計は機械設計のおいて、非常に重要な検討過程になります。
基本設計の出来具合によって、完成度の高さ、トータルコスト、機械の完成日程に大きく影響していきます。
検討図には、次工程の詳細設計で組立図、部品図を作成するために検討内容を明確にする必要があります。
具体的な内容は下記のようなことです。
- 機械の構造や機構を実現する機械要素や機械部品の決定と配置(具体的な寸法、精度、材質などを決めていく)
- アクチュエータ(オン/オフする装置)やセンサなどのメカトロ部品の選定と配置、その配線や制御方法
- 機械の剛性やバランスなどの静的強度や、加速度の慣性や振動、騒音などの動的特性を確認(設計計算、解析、シュミレーション、干渉チェックなど行う)
- 下流工程の加工や組み立て、分解方法
- メンテナンス方法
- 評価基準と評価方法
検討する過程で、構想設計や仕様書の内容を変えないといけない場合があります。
どう変えればいいかを検討した上で、前の段階に戻って検討し直します。
検討図を完成させるとともに、仕様書の細部まで見直しを行っていきます。
基本設計のまとめ
基本設計のまとめです。
基本設計のまとめ
- 設計計算や解析、シュミレーションを行う
- 前段階に戻り再検討することも必要
プロセス⑤:詳細設計・・・部品の製作、組み立て作業を数値化する
機械設計の仕事プロセス⑤は『詳細設計』です。
- どんなことをするのか?
- どんなことが必要なのか?
詳しく解説していきます。
組立図、部品図を作成する
製品(装置)の部品を製作、組み立て作業を数値化するために組立図、部品図を作成します。
組立図は、組立工程あるいは製品(装置)のユニットごとに作成します。
基本的には組立図を完成させてから、部品図を作成していきます。
部品図が出来上がったら、組立図に再配置して間違いがないか確認します。
組立図に記載する内容
- 組み立てられるすべての部品(ねじやバネ、センサやモータなど)とその名称および品番、個数
- 組み立て時に必要となる指示内容、および寸法や公差
- 部品の一部を変形させて組み立てる場合には、その加工部分の寸法や公差
部品図に記載する内容
- 部品の名称
- 基準面(機能や加工方法、組立作業を考慮する)
- 部品を制作するのに必要なすべての寸法と公差(機能や加工方法、組立作業を考慮する)
- 材料名やそのグレード
- 表面粗さ
- 表面処理(塗装も含む)や熱処理方法
組立図、部品図の記載する内容は、各々の企業によってルールがあります。
しかし、記載する内容は基本的に変わりません。
それは、組立図、部品図が決定すると製品と性能だけではなく、製品原価や組立工数も大きな影響を及ぼすためです。
機械設計者は図面を完成させる上で、QCDのバランスへの配慮が重要になってきます。
詳細設計のまとめ
詳細設計のまとめです。
詳細設計のまとめ
- 部品ごとに分解し、寸法と公差を付加する
- 加工方法・組立作業を形状に反映する
QCDとは・・・
品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)の頭文字をとった略語。
『品質が高く、安価で、作りやすい』
という矛盾する観点に対して、バランスのとれたものづくり実現するための目標を設定するときの視点。
ひとつの製品に対して、各部門がそれぞれの観点をもとにQCDを追求していくことで製品の全体価値が高められる。
プロセス⑥:デザインレビュー(DR)・・・設計の後戻りやトラブルを未然に防ぐ活動

機械設計の仕事プロセス⑥は『デザインレビュー(DR)』です。
- どんなことをするのか?
- どんなことが必要なのか?
詳しく解説していきます。
デザインレビュー(DR):別名「設計審査」
デザインレビュー(以後DRと言います)は設計する際に最も重要な活動です。
DRは設計者と製造部門、営業部門、品質保証部門などの専門家や責任者を集めて行います。
それぞれの立場から品質を評価したり、製造上のトラブルを予見して設計不適合を発見していきます。
設計不適合を発見するだけではなく、必要だと思われる処置を提案していきます。
デザインレビュー(DR)を行う主な目的
DRを行う目的は、設計する際に以下のことが重要だからです。
- 設計上のトラブルを早い段階で発見すること
- トラブルの対策を講じることで、設計の後戻りやトラブルを未然に防ぐこと
- 品質を確保し、業務の効率を高めること
重要なことは、設計でのトラブルを後工程に流さないことです。
そのためにも、的確な指摘や判断ができる知識と経験のあるベテラン者が必要になります。
厳しい目で見てもらうことで、設計上に起こりそうなトラブルを事前に防ぎ、品質不良や事故、納期遅れなどの問題を防止してもらいます。
DRは、後戻りやトラブルを防ぐだけではなくて、組織全体の活性化する狙いがあります。
デザインレビュー(DR)の開催時期
一般的には
構想設計、基本設計、詳細設計、試作・評価
など各工程のあともしくは
企画段階、構想段階、試作段階、量産試作段階
など各段階の節目に行っていきます。
DRで指摘された内容や問題に対しては、設計者は具体的な対策や修正を施さないといけません。
DRで全員から承諾が得られたら次の工程へ進むことができます。
デザインレビュー(DR)のまとめ
デザインレビューのまとめです。
デザインレビューのまとめ
- 設計のトラブルを早い段階で発見し、未然に防ぐ
- 品質を確保し、業務の効率を高める
プロセス⑦、⑧:部品表作成、手配・・・機械の完成に必要な部品は全て部品表に記載する
機械設計の仕事プロセス⑦は『部品表作成』、プロセス⑧は『手配』です。
- どんなことをするのか?
- どんなことが必要なのか?
詳しく解説していきます。
部品表作成
組立図と部品図の作成が完了したら、実際に部品を手配するための部品表を作成します。
部品表をもとに製作品、購入品の手配が行われます。
部品表に記載される内容
製作品の場合
- 部品番号(図番)
- 部品名
- 材質
- 処理方法
- 重量
- 手配先名(指定がある場合)
- 個数
購入品の場合
- 部品番号(図番)
- 部品名
- 品番(型式)
- 購入先名(メーカー名)
- 個数
など、手配に必要な内容を記載していきます。
部品表はシステムによって自動で作成されることが多いです。
機械設計者の重要な業務として、作成した部品表に間違いがないか、組み立てるのに必要な部品が全て網羅してあるか細部までチェックします。
間違いや不足があった場合は、後工程に影響して、機械完成の日程が大きくズレたり、コストが無駄にかかります。
作業指示書が作成される
組立図、部品図、部品表の情報をもとに作業指示書が作成されます。
作業指示書は、機械設計者ではなくて、一般的に生産管理部門が作成します。
部品表作成、手配のまとめ
部品表作成、手配のまとめです。
部品表作成、手配のまとめ
- 部品表の間違いがないかを細部までチェック
- 作業指示書によって最終的な機械完成時期を明記
作業指示書とは?
- 製作品や購入品の部品集荷時期
- 組立順序と日数
- 評価や動作確認
などの日程が示されているもので、最終的な製品完成が明記されている
さいごに

機械設計のプロセス(手順)について、詳しく説明してきました。
最後に各プロセスのまとめです。
まとめ
プロセス①:企画段階のまとめ
- 要求仕様書の作成は、設計者の役割
- 要求仕様書とは、顧客ニーズと自社シーズを結びつけたもの
プロセス②:構想設計のまとめ
- 実現できそうなアタリをつける
- 開発期間を短縮するコンカレント・エンジニアリング(CE)を実現する
プロセス③:仕様書作成のまとめ
- 仕様書は、設計者の考えを説明するためのもの
- 難しくなくて、理解しやすい文章でかくことを心がける
プロセス④:基本設計のまとめ
- 設計計算や解析、シュミレーションを行う
- 前段階に戻り再検討することも必要
プロセス⑤:詳細設計のまとめ
- 部品ごとに分解し、寸法と公差を付加する
- 加工方法・組立作業を形状に反映する
プロセス⑥:デザインレビュー(DR)のまとめ
- 設計のトラブルを早い段階で発見し、未然に防ぐ
- 品質を確保し、業務の効率を高める
プロセス⑦、⑧:部品表作成、手配のまとめ
- 部品表の間違いがないかを細部までチェック
- 作業指示書によって最終的な機械完成時期を明記
長文になってしまいましたが、少しでも参考になってもらえれば幸いです。
機械設計者としてレベルアップしていくために専門知識や経験も大切ですが、経済状況、社会情勢など知ることも大切です。
今より良い設計ができるためにも、日々の勉強を大切にして視野を広くしてきましょう!
それでは!
参考文献
こちらの書籍から引用している箇所が多くあります。
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